カフェで独立

2005/02/11

 


「人を癒せる空間を作り出したい」、「自分の好きな演出をしたい」とカフェを開くことに憧れる方は多いでしょう。表舞台は華やかなカフェですが、裏舞台で は並々ならぬ努力と苦労が重ねられ、生半可な気持ちで始められるものでは決してありません。今回は、「カフェで独立」というテーマの下、前半は2人の起業 家によるパネルディスカッション、後半は関西方面を中心にカフェなど飲食店を展開する起業家のゲストスピーチで、カフェ経営にまつわるお話をお伝えしよう と思います。



入江氏 まず、起業の経緯も含めて自己紹介していただけますでしょうか?




藤代氏 就職する時点で既に独立を考え、どういった会社が伸びるか見たいと思い、就職先はリクルートを選びました。10年後には独立するつもりでしたが、会社が面 白くて約15年続けました。その間、求人情報誌の営業で3000社以上は回ったと思います。キッズアミューズメントカフェ「スキップキッズ」にはその時の 経験が活かされています。
武藤氏 私は藤代さんと全く違うタイプですね。いかに就職しないで暮らしていくか考えていました(笑)。まあ、型にはまらないと言うか企業に馴染まない人間でしたので、自分の夢をかなえる一手段として起業を捉えていました。
入江氏

具体的な起業理由はどういったものでしょうか?

藤代氏 2点あります。40歳を過ぎると体力が衰えるという危機感が1点。リクルートで携わっていた新規事業が一区切りがついたことが2点目。もともと32歳で独立する予定だったことを考えると、6年ほど遅れていますが……。
武藤氏 私はフリーランスでしたので、もともと起業しているようなものでした。ですから「起業」することに特別な理由はありませんでした。
入江氏 飲食業を営んでいく中で工夫された点は?
藤代氏 スタッフと意識を共有することです。自分の意思をうまく伝えることで、彼らのモチベーションを高く保とうと思っています。
武藤氏 退職すると極めて自由になりました。「納期」と「評価」がなくなるため、自制しないといけません。また、開業に先立ち、ワタミとスターバックスで3ヶ月間 ほど研修させていただきました。おかげさまで起業直後、コーヒーの淹れ方やゴミの捨て方で戸惑うことはありませんでした。
入江氏 藤代さんの「スキップキッズ」は月当たりの集客する5000人以上。場所を選ぶときも非常に緻密にデータを収集・分析されたと聞いていますが?
藤代氏 私の仕事はターゲットが明確、お子さんとお母さんで99%を占めます。人口分布に併せて、公園の数や核家族の率なども調べ、慎重に慎重を重ねました。前例 の無い事業でしたので、どれだけ繁盛するか不安でしたが、メディアで取り上げられた甲斐あり、2週目から行列が出来ました。来週の予約も、「大人10人に 子供10人」、「大人17人に子供17人」、といった感じです。集客数では予想をはるかに上回っています。
入江氏 起業してよかったと思う瞬間は?
藤代氏 1日に100人強の子供達が楽しんくれていることを何よりも嬉しいと思っています。お母さんもかなりの方がお礼を言って下さいます。「また来ます」と帰って、翌日来てくれたりしますからね。
武藤氏 同感です。お客様からお礼いただいた時が一番嬉しいですね。やっていて「このままでいいのかな」って、迷う時もありますし。
入江氏 これからの目標を一言ずつ。
武藤氏 食べ物は、言葉は通じない人を通じ合わせる力を持っているほど生活に密着したものです。今後、もっと色々な面で楽しんでいただけるようクッキング教室などのサービスも加えて、「飲食業」から「フードビジネス」へと拡大を図ります。
藤代氏 「ス キップキッズ」は、大変繁盛してますが、夕方になると多少閑散としてきます。遊びを軸にとして、今後は学びの要素も加えて行こうと思います。「何か身に付 けたいけど、子供が入るから……」からとためらわれるお母様方のニーズにお応えして、今後「英会話」「パソコン」が学べる空間も用意しようと思っていま す。現在既に導入した「フラワーアレンジメント教室」も席が埋まっている状態です。
入江氏 繁盛すると店舗拡大に視点を移す人が多い中で、お2人は複合的に事業展開をされていらっしゃるようですね。
続きまして、株式会社バルニバービ代表取締役の佐藤裕久氏による講演です。テーマは「くるたのしい飲食業という仕事」

 

皆さんこんにちは。バルニバービの佐藤です。
私の経験を交えながら飲食店経営に必要な要素を話させていただきます。

まず何よりも大切なのは「ここならいける」という感覚です。客層や客足を調べることはもちろん大切ですが、あまりに神経質になる必要はありません。裏通り沿いのお店だとしても、駅から10分歩けば大抵来られるものです。

私 は、海に面した横浜赤レンガ倉庫の1階に「スミレ」というレストランを開いています。初めてそのお話をいただいたのは、今から約4年程前のことです。「地 元の神戸に似てるなー」と思いながら桜木町近辺を歩いたことは今でも覚えています。その時、提示された場所は3階でした。直感的に1階ならいけると思いま したが、既に埋まっているとのこと。3階では、どうしても納得できず、その時は結局出店を見送らせていただきました。

 

しかし、それから約1年後に、担当の方から1階が空いたという連絡をいただき快諾いたしました。

次 に大切なのは「こんなのがあったらいいなー」という感覚です。横浜赤レンガへの出店表明したものの、お店の内容がどうしても決まりません……カフェ、中 華、レストラン……。あの時は、直観的に「ここならいける」って思ったのに、何をしたらいいか全然思い浮かびません。でも、あるとき気がついたんです。 「どうしたらうまくいくか?」ということばかり考えて、「こんなものがあったらいいな」という視点を忘れてしまってましたんですね。

 

私は京都の実家に帰省し、自分の感性や気持ちも「里に帰し」ました。その時、本当にたまたまですが、幼い時の私が写っている写真帳を見つけました。それを パラパラめくるうちに涙が止まらなくなってしまいました。僕は実は止め処なく出てきました。私は実はおじいちゃんっ子だったんですが、祖父が写したたくさ んの写真が載っていたんです。

泣きながら「これだ!」って思いました。今の私がこの写真という窓を通してみている幼い頃の自分や祖父……こんな視線が持てるお店をやりたいんだって。全てが解決した瞬間でした。

嬉しいことに「スミレ」は今一番収益のある店舗の一つです。

 

私は自分のやっていることを実は飲食業とは捉えていません。そんな実業的な内容ではなく、「これは面白そうだ!」「これやりたい!」とい気持ちを形にして いるだけです。 やり始めたらイヤなことや辛いことも絶対出てきます。それでも続けられるのは、自分が心底やりたいと思うからです。私は今また東京タワー の本当に目の前……タワーを頭上に見上げるような場所でカフェを作っています(4月上旬の完成予定)。相談した人は皆「辞めた方が……」と忠告してくださ いました。厳しい場所であることは確かです。でも、この場所だからこそ伝えられることあると思っています。

こに来られている方は私と似た感覚の人が多いだろうと思います。自分の「想い」が伝わるカフェをぜひ作ってください。